奥歯に噛むと痛む症状があるのに、歯科医院で検査を受けても「虫歯でも歯周病でもありませんね」と言われてしまった。そんな経験はありませんか。原因が分からない痛みは不安なものですが、その犯人は、実はあなた自身の「癖」にあるのかもしれません。その癖とは、日中の無意識の「食いしばり」や、夜寝ている間の「歯ぎしり」です。本来、私たちの上下の歯は、会話や食事の時以外は接触しておらず、わずかな隙間が空いているのが正常な状態です。一日に歯が接触している時間は、合計してもわずか二十 分程度と言われています。しかし、ストレスや集中などによって、日中、気づかないうちに上下の歯を「グッ」と噛みしめたり、接触させ続けたりする癖(TCH:歯列接触癖)がある人は少なくありません。また、睡眠中の歯ぎしりは、時に体重以上の非常に強い力で歯をこすり合わせていると言われます。こうした過剰な力が、特定の奥歯にかかり続けるとどうなるでしょうか。歯と顎の骨の間には、「歯根膜」という薄いクッションのような組織があります。この歯根膜が、持続的な強い圧迫によって炎症を起こし、いわゆる「捻挫」のような状態になってしまうのです。これが「咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)」と呼ばれるもので、虫歯がなくても「噛むと痛い」「歯が浮いたような感じがする」といった症状を引き起こすのです。この状態を放置すると、歯がすり減ったり、歯にヒビが入ったり、歯周病を悪化させたりと、様々なトラブルの原因となります。対処法としては、まず日中に歯を接触させている癖がないか、自分自身で意識することが第一歩です。そして、夜間の歯ぎしりに対しては、歯科医院で専用の「ナイトガード(マウスピース)」を作製し、就寝中に装着することで、歯にかかる力を和らげることができます。原因不明の奥歯の痛みは、あなたの体と心が発しているストレスサインかもしれません。一度、ご自身の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
虫歯じゃないのに奥歯が痛い?犯人は食いしばりかも