美容医療の選択肢として人気の高いボトックスですが、その裏には一般にはあまり語られないリスクが存在します。施術を検討する際には、これらのリスクについても十分に理解しておくことが賢明です。まず、ボトックスの過剰な使用による「無表情」のリスクです。シワをなくしたいという気持ちから、多量のボトックスを注入してしまうと、表情筋の動きが大きく制限され、笑顔や驚きの表情が不自然になったり、あるいは全く表現できなくなったりすることがあります。これは「ボトックス顔」として知られ、周囲から違和感を持たれる原因となるだけでなく、自身の感情表現にも影響を及ぼす可能性があります。人間関係や仕事において、表情は非常に重要なコミュニケーションツールであるため、無表情になってしまうことは、精神的な負担にも繋がりかねません。次に、左右差が生じるリスクです。人間の顔は元々完全に左右対称ではありませんが、ボトックスの注入量や注入部位のわずかな違いによって、眉の高さや口角の上がり方、あるいは目元の開き具合などに左右差が生じることがあります。一度生じた左右差は、効果が薄れるまで修正が難しい場合があり、これが施術を受けた方の大きなストレスとなることがあります。施術者の技術はもちろんのこと、個人の表情筋の癖や骨格を正確に把握し、繊細な調整を行うことが求められます。また、ボトックスが意図しない筋肉に拡散してしまうリスクも無視できません。非常に稀なケースではありますが、注射した薬剤が周囲の筋肉に広がり、まぶたのたるみ(眼瞼下垂)や複視(物が二重に見える)といった合併症を引き起こすことがあります。特に目元周辺の施術では、細心の注意が必要です。このような合併症が生じた場合、日常生活に大きな支障をきたす可能性があり、効果が薄れるまで数ヶ月間、症状に悩まされることになります。さらに、長期的な視点でのデメリットも考慮すべきです。ボトックスを継続的に注入し続けることで、ごく稀にですが、体がボトックスに対する抗体を作り、薬剤の効果が薄れてしまう「耐性」が生じることが報告されています。