奥歯を抜いた後、麻酔が切れるとズキズキとした痛みが出てくるのは、ある意味で当然の反応です。抜歯は、骨の中から歯を抜き取る外科的な処置であり、傷口が治る過程で炎症が起こるため、数日間は痛みが続くのが一般的です。通常、この痛みは処方された痛み止めでコントロールでき、一週間もすれば徐々に和らいでいきます。しかし、一週間以上経っても痛みが引かない、あるいは一度治まった痛みが再び強くなってきた場合は、注意が必要です。それは、単なる治癒過程の痛みではなく、何らかのトラブルが起きているサインかもしれません。その代表的なものが「ドライソケット」です。通常、歯を抜いた穴には血の塊(血餅)ができ、それが蓋となって傷口を保護し、治癒を促します。しかし、強いうがいなどでこの血餅が剥がれてしまうと、骨が剥き出しの状態になり、細菌に感染して激しい痛みを引き起こすのです。これがドライソケットで、抜歯後二、三日から十日くらいの間に発症することが多いです。また、抜歯の際にできた骨の鋭利な部分や、歯の小さな破片が残り、それが歯茎の粘膜を刺激して痛みを引き起こすこともあります。これは「骨棘(こつきょく)」や「腐骨(ふこつ)」と呼ばれ、自然に排出されることもありますが、痛みが強い場合は歯科医院で除去してもらう必要があります。抜歯後の痛みが長引く場合や、強い悪臭を伴う場合、あるいは発熱や顔の腫れが見られる場合は、迷わず抜歯をしてもらった歯科医院に連絡してください。自己判断で放置すると、治癒が遅れるだけでなく、より深刻な感染症に繋がるリスクもあります。不安な症状は、早めに専門家に相談することが大切です。