あれは冬の寒い朝のことでした。目が覚めてあくびをしようとした瞬間右の耳のあたりでバキッという凄まじい音が鳴りそのまま顎がロックされたように動かなくなってしまったのです。それまでも食事中に顎がカクカク鳴ることはありましたが痛みはなかったので放置していました。しかしその日は指一本分くらいしか口が開かず無理に開けようとすると激痛が走りました。焦った私はすぐにスマートフォンで病院を検索しましたが顎が痛い時は何科に行けばいいのか全く見当がつきませんでした。関節だから整形外科なのだろうかそれとも耳の近くだから耳鼻咽喉科なのだろうかと迷いに迷いました。とりあえず家から一番近かった整形外科に電話をかけて事情を説明しました。受付の方は親切でしたが顎の関節は専門外なので歯科か口腔外科に行ってくださいと言われました。そこで初めて顎の痛みは歯医者さんの管轄なのだと知りました。しかし近所の歯医者さんは虫歯治療で通ったことはあるものの顎を見ているイメージが全く湧きません。半信半疑のままかかりつけの歯科医院に電話をすると院長先生が口腔外科の経験もあるとのことで診てもらえることになりました。予約の隙間に入れてもらい急いで向かいました。歯科医院の椅子に座り口が開かない状態を見せると先生は慣れた手つきで顎の周りの筋肉を触診し口の中の様子を確認しました。診断結果はやはり顎関節症でした。関節の中にあるクッションの役割をする関節円板という組織がずれてしまい骨と骨の間に挟まって顎の動きをブロックしている状態だと説明されました。専門用語ではクローズドロックと呼ばれる状態だそうです。先生は今の段階なら徒手整復といって手で顎を動かして円板を元の位置に戻せるかもしれないと言いました。少し痛いかもしれないけれどやってみますかと聞かれ藁にもすがる思いでお願いしました。先生が口の中に指を入れ特殊な方向に力を加えながら顎を動かすとコクンという感触と共に嘘のように口が開くようになりました。その瞬間の安堵感は今でも忘れられません。その後再びずれてしまわないようにマウスピースを作成することになりました。型取りをして一週間後に完成した透明なマウスピースを寝る時に装着する生活が始まりました。先生からは硬いものを食べないことや大きな口を開けないこと頬杖をつかないことなど日常生活での注意点も細かく指導されました。もしあの時整形外科や耳鼻咽喉科を回っていたら適切な処置を受けるのが遅れて症状が固定化してしまっていたかもしれません。顎関節症は放置すると口が開かなくなるだけでなく顔の歪みや慢性的な頭痛の原因にもなると聞きました。私の場合は運良く口腔外科の知識がある先生に出会えましたが病院選びの重要性を痛感した出来事でした。その後も定期的に通院し噛み合わせの調整などを続けていますが以前のような恐怖を感じることはなくなりました。同じように顎のトラブルで悩んでいる人がいたら迷わず歯科口腔外科を受診することをお勧めします。専門の先生に診てもらうことで原因がはっきりし適切な治療を受けることができるはずです。
突然口が開かなくなった私が口腔外科に辿り着くまでの体験記